井筒俊彦の比較哲学
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『井筒俊彦の比較哲学』
~ 神的なものと社会的なものの争い ~
著者:バフマン・ザキプール
井筒は10年に及ぶイラン滞在中に,12イマーム・シーア派世界のヒクマ哲学とイルファーン神智学の研究に従事,それらを融合・発展させ,12イマーム・シーア派神学の煩瑣哲学の問題を現代に適合させ,独自の業績をあげて尊敬された。1979年のイラン・イスラーム革命を機に帰国し「東洋思想」の研究に着手したが,イランでは帰国後の井筒の活動は知られていない。
本書は井筒の学問に傾倒した著者が,来日して井筒の比較哲学の研究に没頭した成果である。著者はフーコーの「知と権力の関係」やサイードの「オリエンタリズム」の考えを踏まえ,井筒の比較哲学を考察する。
第Ⅰ部はトインビーの文明論やマッソン=ウルセルの比較哲学を通して,比較哲学の必要性と政治的・社会的現実との連動関係を分析する。
第Ⅱ部では,井筒に影響を与えたアンリ・コルバンの思想を検討し,井筒の比較思想の意義を解明する。
第Ⅲ部は井筒とコルバンにおける比較哲学の政治的・社会的次元と認識論的問題を考察するため,オリエンタリズムと「反対のオリエンタリズム」の意味を検討,イラン革命と井筒の比較哲学との関連にも言及する。
わが国では現象学や言語学,日本文化,イスラーム学などから井筒哲学が研究されてきたが,本書は比較哲学の背後で働く社会的・政治的事象との関連で井筒比較哲学を読み直した意欲的な業績である。
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