厳しい現実を鋭い視点で描いた、近現代のイラン文学:特集号
2022年秋に発行された文芸思潮・第85号(アジア文化社)は、近現代イラン文学が特集されています。
詩や映画、絵本、社会事情まで、近現代イランの情報がぎっしり詰まったお勧めの保存版。
編集後記を見ると、この特集は鈴木珠里氏が中心となって進められたことが書かれています。
本特集の冒頭で、鈴木珠里氏がイランの文学とイランという国に関して概要をまとめ、次にイラン現代文学について踏み込んだ解説と、フォルーグ・ファッロフザードを始めとする現代詩人の訳詩を載せています。
これに続き、金子冬美氏がフォルーグ・ファッロフザードが監督した映画作品『あの家は黒い』の制作背景や映画の中のシーンを紐解き解説しています。
そして、中村菜穂氏が、20世紀イラン現代詩人、ソフラーブ・セペフリーについて紹介すると、再び金子冬美氏が、こちらもイラン革命前の名作映画である『牛』について解説。
さらに、北原圭一氏が映画『牛』の原作であるゴラームホセイン・サーエディー著『バヤル村の会葬者』第4話の訳文と、関連エピソードを執筆しています。
バトンリレーのように内容がつながっていて読み進みやすい上、どれも読み甲斐があり、詩人や詩人の作品、または映画作品をもっと知りたくなる特集となっています。
この特集はさらに、イランの絵本の翻訳や紹介活動を行っている愛甲恵子氏が、1970年代に作られたイランの絵本について執筆、そして久保健一氏が、現代イランの社会事情を交えた人々の趣向について寄稿しています。
近現代のイランを知る上での参考書としても、とてもお勧めの一冊です。
★鈴木珠里先生のクラスの詳細は、以下のクラス名をクリックしてご覧いただけます。
・レクチャーコース「近現代ペルシア文学」(春コース:2023 年 3 月 28 日 ~)
★北原圭一先生のクラスは、以下のクラス名をクリックしてご覧いただけます。
・言語コース「ペルシア語新聞読解」(春コース:2023年3月30日~)
・レクチャーコース「ペルシア語の新聞の読み方」(春コース:2023年3月24日 ~ )
(この記事は、旧Kimiyaのサイトにて2023.3.3に書かれたものです)